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[ 2021.08.15 ]

ウイルスに「打ち勝つ」という発想は不遜だと思う。

ウイルスに「打ち勝った証としての五輪」という言葉を聞いた時,「打ち勝つとは不遜でしょ?」と思った。

そもそも「打ち勝つ」という発想自体が間違いだし,打ち勝ったという幻想さえ抱くこともできない状況だった。

その五輪の閉会式のナレーションで流れた「より速く,より高く,より強く」というオリンピックのモットーを聞いた時,この価値観そのものがすでにとても古く感じた。

五輪は結果が全てではないと言いつつも,メダルを争う競争である。そしてメダルの数は国ごとにカウントされる。

しかしアスリート達のバックグランドは様々だ。オリジン,生い立ち,経歴を個々に見た場合,どれだけの国や文化が関わって今日の彼らがあるかを思うと,どの国の選手ということはほとんど意味がない。

この2021年の夏のある瞬間に,どの選手が,どのような記録を残したかということがその選手の人生にとって重要であっても,それが全体の中で何番だったのか,どの国のメダルとしてカウントされるのか,いうことにはほとんど意味がないと感じてしまう。

人は何かのために努力をしている。自分の技能を磨き,何かを追い求めている。

しかし,一番になるための努力には,そのための独自のアプローチが必要であり,特別な戦略とテクニックを要し,かつ何かを犠牲にしなければならない。そこには経済(営利)もついてくる。経済のベクトルが,人の努力と熱意を意図していたものとは違う方向に導いてゆく場合もある。そして,何をもって1番とするかというのは,誰かが決めた基準である。

そんなことを徒然に思いながら,夕暮れの散歩をしていたところ,たまたま福沢諭吉の生家跡に出くわした。

石碑の文字は,「天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ 人ノ下ニ人を造ラズ」

とても有名な言葉だが,福沢諭吉がどんな経緯でこの言葉を思いついたのか,なぜその思想を広めなければならないと思ったのか,その真意を私は知らない。でも,もしかしたら,シンプルな個々の人間性の尊重そのものを,ダイバイーシティやインクルージョンという発想にもつながる思想を包摂しているのかもしれない,そんなことを思いながら帰路についた。

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